FM三重『ウィークエンドカフェ』2020年12月12日放送

今から24年前の夏、鳥羽市安楽島町の海岸で大型草食恐竜の化石が発見されました。
その場所の保全に努めているのが鳥羽恐竜研究振興会のみなさん。
今回は、事務局長の山下直樹さんにお話を伺います。

石研究家の人たちが恐竜の化石を発見

鳥羽竜は大型草食恐竜。
大きさは16〜18m、体重は30〜32t。
子どもたちの体重でいうと、1000人分くらいの体重です。
その化石が1996年に鳥羽の安楽島海岸の、砥浜海岸から発見されました。
7月の暑い時期、化石研究家の人たちがたまたま、「この地はたくさん化石が出るので、あそこへ行けば恐竜の化石も出るかもしれない」と砥浜海岸に行って大きな泥岩の地層で探っていました。
その日も疲れたので木陰で休んで座った石のところから、恐竜の化石らしきものが見つかった。
それが発見のきっかけでした。
その地層は安楽島海岸から松尾地域にずっと伸びる松尾地層というもので、古生代白亜紀前期、およそ2億年前にできた地層です。
白亜紀は恐竜たちが栄えた時代と一致し、貝が出てきていたので恐竜も出るだろうとの推測から、化石の研究家たちが砥浜海岸を訪ねてくれたのです。
実は、それまでは日本の太平洋の海岸では恐竜の化石が出ないとの通説があったのですが、こんなにも大きな化石が出た。
しかもそれは1億年前の大型草食恐竜の化石であることから、日本の恐竜研究の新たな出発点になったんです。

 

羽市と三重県の教育委員会に連絡して調べてもらった

はじめは信じられなくて、珪化木…植物の化石かと思ったのですが、同心円状になっていて、髄の部分と密の部分がなっている。
これは恐竜の化石だと確信を持って、すぐに鳥羽市の教育委員会と三重県の教育委員会に報告して、京都大学の化石専門家の亀井節夫先生に確認していただき、やはりこれは草食恐竜の化石であるとわかりました。
これが大発見に繋がりました。
教育委員会の課長さんは、誰かに持ち去られたらいけないということで、発見されてから一晩二晩、発見された海岸で、昼はこうもり傘をさして番をして、誰も持っていかないように守ったそうです。

 

究振興会の役目は2種類の化石の保護と鳥羽竜を紹介すること

現地の環境保全は波に表れます。
台風や大嵐が来るとあらわれて岩石が破壊されます。
鳥羽竜の他にもうひとつ、身体が小さめな草食恐竜イグアノドンの足跡化石もあるので、それも守らないといけない。
2種類の化石の保護をしないといけません。
これが研究振興会の役目のひとつ。
もうひとつは日本の化石研究の先駆けとなった鳥羽竜の成果を、子どもたちに紹介すること。
みんなもこの現場で掘ってみたら、もしかしたら本物の化石が見つかるかもしれない、という夢に挑戦してほしい。
まずは貝の化石を見つけながら、まだ見つかっていない部位の化石が見つかるかもしれないという夢があります。
それを子どもたちに紹介します。
やってくる子どもたちの意欲はすごいです!
低学年の子どもたち対象で、今年の夏に化石採集会の募集を行ったところ、30名の枠に対して81人の応募がありました。
せっかく応募してくれたのだから断るわけにいかないと思い、みなさん一緒に行くことになりました。
現場で硬い石をトントン割っていくと、子どもたちは次々に見つけてくれるんです。
巻き貝の化石、二枚貝の化石…。
歯の化石を狙っていたのですが、それはなかなか行き着かず、それでもよく似た化石を発見してくれて、子どもたちの夢が広がっていきました。

 

層が長い年月をかけて発見されたこの場所まで移動してきた

恐竜が生きていた時代、日本列島そのものはありませんでした。
朝鮮半島、ロシアの方のウラジオストック…これらを結ぶアジア大陸の左端にあって、そのあたりにできた海岸地域の湖沼で恐竜が遊びに来ていました。
たまたまそこで肉食恐竜に襲われたり嵐に遭って亡くなる。
ずっと海の底に沈んで化石になりました。
地球は、プレートというのに乗って成り立っています。
太平洋のプレートは1年に2〜3cmずつハワイの方からアジア大陸の方へ動いています。
実は日本列島も、プレートの移動によって大陸の端が剥ぎ取られたもの。
これが約2000万年前から1000万年前にどんどん剥ぎ取られて、朝鮮半島から離れて、日本列島ができました。
ちょうど紀伊半島の端の方に来て、残ったと。
これが鳥羽、さらに10年後に発見された丹波、その前後に発見された福井、最近では北海道のむかわ町穂別地区でカムイサウルスが発見されました。
身体の約80%が残っていたため、新種として『カムイサウルス・ジャポニクス』と学名が付いたんですね。
丹波も発見率が高いのでタンバティタヌスと名前が付きました。
鳥羽はまだ略称で『鳥羽竜』となっています。
ここから発見の部位が多くなると『トバティタヌス』とか、発見者の名前が間に入って、鳥羽竜に学名が付くというロマンもあります。

鳥羽竜の発見は鳥羽市にとって大きな宝です。
鳥羽に恐竜博物館ができると、大きな力になると思います。